Ionicはなぜ「遅い」と判断されるのか──WebView実行モデルから見るパフォーマンス誤解の核心

1. Ionicを「遅く感じさせる前提条件
Ionic製アプリが問題になりやすいのは、次の条件が重なったときだ。
- 画面遷移やスクロール頻度が高い
- UI状態が頻繁に更新される
- JavaScript側で一定量の計算を行う
これらはネイティブアプリでは即座に問題にならないが、Ionicでは同一スレッド資源を奪い合う構造の中で表面化する。
2. WebView内で実際に起きている処理の流れ
Ionicアプリでは、ユーザー操作に対して次のような処理が走る。
ここで重要なのは、描画とJavaScript実行が同じWebViewプロセス内で競合している点だ。
処理自体は高速でも、発生頻度が増えると描画が後回しになり、スクロールの引っかかりとして体感に現れる。
3. UIが詰まる瞬間はどこで発生しているのか
実運用で問題になるのは、次のタイミングだ。
- スクロール中に状態更新が走る
- アニメーション中にJS処理が割り込む
- タップ連打でイベントが詰まる
これはIonicが遅いからではなく、WebViewのイベントループが詰まる構造を持っているからだ。
ネイティブUIは描画がOSレベルで分離されているが、Ionicでは分離できない。
4. フレームワーク別に変わる負荷の性質
IonicはUIレイヤーであり、実際の負荷特性は使用フレームワークに依存する。
- Angular
変更検知が広範囲に及ぶと、DOM評価回数が一気に増える。 - React
再レンダリング範囲は制御しやすいが、設計を誤ると差分計算自体が負荷になる。 - Vue
軽量だが、状態管理の粒度が粗いと更新が連鎖する。
いずれの場合も共通するのは、DOM更新頻度が体感速度を決めるという点だ。
5. ネイティブとの差が決定的に現れる領域
Ionicは「通常操作」では問題なく見えるが、「連続操作」「高速操作」で一気に差が出る。これが「最初は問題なかった」という評価につながる。
Ionicは遅いのではなく、WebViewの実行モデルを前提に動いている。その前提を理解せずにネイティブと同じ操作密度を求めれば、必ず違和感が出る。Ionicとは速度を追求する技術ではなく、制約を理解した上で効率を取るための選択肢だ。その線引きを誤らなければ、評価が極端に割れることもなくなる。
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